スィミア 第一章‐3

※前回の続きd(ry


低く鋭い声が早口で周りに響く。
「全く、あんたはいっつも兄さんに頼りっぱなしじゃないか!そんな初級レベルの魔法も使えないなんて、そんなんじゃ永遠に進級できないぞ!」
「だって・・・」
「だってじゃない!あんた、一流の大魔法使いになるのが夢なんだろう!?今の状態でなれると思ってるのか!」
「・・・・・・」
さっきまではしゃいでいたのがうそのように、厳しい言葉をくらったメルは下を向いたまま黙った。
「・・・それくらいにしておきな、マル」
「兄さん・・・・・・はい」
アルトの声の持ち主は、一回メルを睨んだ後、静かに口を閉じた。
彼女の名はマレッタ・ベルリアス。通称マル。俺の上の妹で、学年は4年生。
メルとは違ってとってもしっかりしていて、ベルリアス家の中では全てが“完璧”と言ってもおかしくない、俺の自慢の妹だ。
ただ・・・、こいつも姉妹だからなのか、学力に関しては自分が上だからというので、度々小ばかにしてくるんだよな。
本人は気づいてないかもしれないけど、俺その度に結構傷ついてるんだぜ?だって、口調があんなんだからなぁ・・・。誰に似たんだか。
性格は男ざまりなところもあるが、とにかく色々細かく、厳しい。簡単にいえば、授業中寝ているやつとか見かけたら、すぐに殴りに行って注意する、危険な学級委員タイプだな。実際にやったことがあるらしい。・・・叩き起こされたやつにご愁傷様と伝えたい。そして謝りたい。
マルの魔術の成績は、学年では上の方なんだが飛び級というわけではない。そのため、魔術の実力だけ俺に負けているのが悔しいらしく、よく教えてほしいと頼みに来る。今日みたいな放課後とかにな。たぶん、今日も魔術の特訓をしてほしいので俺のところに来たんだと思う。
「ところでマル、今日も魔術を教えてほしくて来たのか?」
俺がマルに尋ねると、マルは俺の足元に跪き、真面目な口調で言った。
「兄さん・・・いえ、兄上。校長先生がお呼びでございます。本日はこのことをお伝えしたく、参りました」
マルが俺のことを兄上と呼ぶときは、とても重要な件のときだ。
校長先生が呼んでるなんて・・・、俺なんか悪い事したか?記憶にないんだが・・・。
「分かった、ありがとう。しばらくしたらすぐに向かうと伝えてくれないか?」
「はい。すぐに言ってまいります」
そう言い残すと、マルは瞬間移動魔法を唱え、どこかへ消えていった。
「・・・大丈夫か?メル」
俺はまだ隣で下を向いているメルに話しかけた。
「・・・うん」
今にも泣き出しそうな、弱々しい声が返ってきた。・・・相当傷ついてるな、これ。
「とりあえず、今日は家に帰りな。俺は校長と話すことがあるから、先に帰っていた方がいいぞ」
「・・・うん。そうする」
・・・重い。この空気絶えれん。はぁ・・・、しょうがないなぁ。
「家でちゃんと待ってたら、好きな物出してやるから」
「・・・本当?!やったー!ありがとう兄ちゃん!!」
メルがいつもの調子で叫んだ。あーあ、甘いなぁ、俺。
「ただし!マルに言われたように、ちゃんと魔術の練習しろよ!」
「分かってるって!それじゃ、先帰ってるねー!」
そう言うと、メルはほうきにまたがり、ふらふらしながら飛んで行った。あいつ、まだほうきも乗り回せないのかよ。一体どんだけ馬鹿なんだよ・・・。
「さてっと――、行くか」
俺はゆっくりな足取りで、校長室に向かった。
この後、自分の行動に後悔することも知らずに・・・。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

☆あとがき☆

今回は話の流れの都合上、短めとなっておりますm(__)m
実にすいません。

またまた新キャラ登場です!マルです!
メルに対して超スパルタな厳しいお姉さんですが、アルに対しては結構甘いところがあります。
あ、決してブラコンではありません←
かといってシスコンでもないでs((黙

マルの絵も近日うpします☆